楽天プラチナバンド割当てまとめ

投稿日:2022年12月3日

更新日:2022年12月11日

 楽天モバイルから要求のあったプラチナバンドの割り当てについて、最近になり大きく動きがありました。現在の状況を総務省ホームページにある各社の資料を元にまとめました。

目次

プラチナバンド

 プラチナバンドとは700MHz 〜900MHz帯の通称である。一般的に一つの基地局で幅広いエリアを確保でき、また屋内でも通信しやすい特性があるため、通信キャリアにとってはコストパフォーマンスの高い周波数帯である。2022年12月現在、このプラチナバンドはNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社に割り当てられており、楽天モバイルへの割り当ては無い。

楽天の主張

 楽天モバイルはMNOとして2020年に正式サービスを開始し、日本のスマホの通信料金の低廉化に大きく貢献したが、今後も安定したネットワークを安価で提供していくためにプラチナバンドの割り当てが必要、というのが楽天モバイルの主張。2022年10月で人口カバー率98%を達成したが、他キャリア同等の99%を超えるためにはプラチナバンドの割り当てが必要とのこと。

他キャリアの主張

 NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社はほぼ同じ意見で、周波数の再編に対して真っ向から反対とは主張していない(本音は反対と言いたいけど・・・と言ったところか)。ただし、移行を実施する場合も十分な移行期間が必要で、多大な費用が発生すると主張。また、通信品質低下も避けられないで、十分な議論が必要というのが3社の意見である。

移行期間

 プラチナバンドの再配分が決定してもすぐに新しい周波数が使えるようにはならない。既存の免許人(NTTドコモ/KDDI/ソフトバンク)が基地局の設定を変更し楽天モバイルに割り当てられた周波数を開ける作業を実施後に、新免許人である楽天モバイルが新しい基地局を設置する。

 既存免許人はサービスエリア内の品質を確保するしながらこの作業を行うため、10年近くの期間が必要であると主張。一方で楽天モバイルは既存免許人に1年での明け渡しを要求しており、両者の意見には大きな隔たりがある。

移行費用

 この作業には当然費用も発生する。各社の見積もり額は下記の表の通りで3社合計で約3,000億円の費用が発生することが見込まれる。しかし、ここで最も議論になっているのは金額も大小ではなく、費用をどちらが負担するかということ。

 当然ながら、既存免許人は新免許人が負担すべきと主張、逆に新免許人は既存免許人が負担するべきと主張している。ここで大事なのことは、この費用は最終的にはユーザーが負担するようになることを忘れてはいけない。これだけの費用をかけてまで楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てるメリットがあるのかという議論が、現状は少なく感じている。

通信品質

 楽天モバイルに新しい帯域が割り当てられるということは、既存免許人が所有している周波数帯域が狭くなることを意味している。これはトラフィックが混雑することを意味しており、ユーザーからみると「通信速度低下」や「つながりにくくなる」という不便さ発生しやすくなることになる。当然許容されるとは考えておらず、エリア設計の見直しなど何かしらの対策を施す必要があるというのが既存免許人の考えである。

 また、既存免許人であるキャリアはより通信品質を高めるため受信フィルタを使用しているが、このフィルタの再設計と交換作業が移行期間と費用に大きく影響している。※フィルタについて別でブログを書きたいと考えています。

周波数割り当て案

 現状の周波数割り当て案は下記のようになっている。NTTドコモとKDDIから800MHz帯の一部、ソフトバンクから900MHz帯の一部を割り当てる提案がされている。合計15MHz割り当てられているが、10MHzと5MHzで分割されており基地局の設置費用などは他キャリアよりも多く費用が発生しそう。また、これら組み合わせて使用するキャリアアグリゲーション技術では低い周波数の組み合わせは比較的難易度は高く、対応するスマートフォンも限られそうではある。そのため、組み合わせずに使用することが予想される。この場合は、通信速度は他社のプラチナバンドには劣るが、通信エリアの拡大に役立つことは期待できる。

(2022年12月11日追記)

 2022年11月30日に実施された総務省の情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル通信システム委員会 技術検討作業班にてNTTドコモから新しい提案がされた。

 提案された周波数は上り715-718MHz、下り770−773MHzの組み合わせで4Gのバンド28として利用可能な帯域。バンド28は地上デジタルテレビ放送の周波数が近いので干渉が懸念されるが、3MHz帯域幅であれば影響は少ないとの技術的見解も報告している。

 今回の割当てられる周波数を利用できるキャリアは、バンド28に割り当てがない楽天モバイルが筆頭になると考えられる。仮に楽天モバイルに割り当てられた場合、議論されている800-900MHzの再割り当てが必要なくなるかというとそうではない。他キャリアはプラチナバンドとして15MHz以上の帯域幅を使用してエリア構築しているの対して、今回割り当てられるのはたった3MHzの帯域幅なのだ。この点に関してNTTドコモは自社にプラチナバンドとして実際利用している20MHz幅で7,340万人をサポートしているので、3MHz幅ではその約1,100万人をサポートできると算出している

 ( 7,340万人 ÷ 20MHz幅 × 3MHz幅 = 1,101万人 )。これでは、既存キャリアと同等のサービスを提供するには周波数帯域幅としては不足しているのは明らかだ。

ただ、楽天モバイルはこの周波数の活用を歓迎するというコメント出しており、今後は割り当てに動き出すだろう。ただし、他キャリアからのプラチナバンドを分けてもらう考えを取り下げるとは思えない。

タスクフォースによる方向

 このようにNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクと楽天モバイルの意見に大きな隔たりがあったが、総務省主催による「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」の第15回(令和4年11月8日開催)会合で方針が打ち出された。

 まず、移行期間については5年をめどに移行を進めるとし、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの10年間と楽天モバイルの1年間という意見の間をとる期間を目処として示した。

 また、移行費用については、既存免許にが持つべきという方針が示された。その理由は下記の通りである。(総務省資料より抜粋)

電波法は、再免許の付与を保障しておらず、免許の有効期限が到来し、再免許を受けることができなければ、既存免許人自らの負担で周波数の使用を停止しなければならない。
再割当制度においては、無線局免許の有効期間内に、国による周波数変更命令等の対象になった免許人に対しては、「通常生ずべき損失」の補償を行うこ ととされているが、無線局免許の有効期間の満了日以降の日が周波数の使用期限として設定された場合は、既存免許人の負担で電波の使用を停止するこ ととされている。
このため、申出人に再割当てが行われたことにより、既存免許人の周波数の使用を停止するための費用(移行費用)については、既存免許人の負担を原則 とすることが適当である。

 前提として、今回の移行は既存の基地局の免許が切れた時に更新せず新免許人に移行するという方法をとるらしい。そうなった場合、もともとのルールで免許満了後に電波を停止するための費用、簡単にいうとあとかたづけにかかる費用は、既存免許人が負担することになっているから、そのルールを適用するということ。

 これに関しては、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクが納得するとも思えずこれからの議論を注視したい。先ほども書いてが、この費用を負担するのが結局はユーザーであることを理解して議論してほしい。

まとめ

 現状の議論についてまとめた。2022年11月の会合では楽天モバイルに有利な方針が総務省が示された。ただし、本文中ではわかりやすくするため新免許人=楽天モバイルとして記載したが、実際はまだ割り当てが決まったわけではない。

 本当に楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てることが国益になるということを示して、国民が納得するような形で結論が出ることを望む。移行の負担を負うのは国民なのだから。

 本記事に関する情報は、新しい情報が出たら更新、もしくは新しい記事としてアップデートしていく予定である。

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この記事を書いた人

第一級陸上無線技術士の資格を持つ無線屋さんです。このブログでは日本の5G情報をまとめていきます。週に3本程度はアップしていきたいです。

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